公開日:2026-05-04 読了時間:約7分 対象読者:ホテル・旅館のリニューアルを検討しているオーナー様
リニューアルを検討し始めたとき、多くのオーナーがまず考えるのは「内装をどう変えるか」「どの設計会社に頼むか」です。
しかし、リニューアルで期待した結果が出なかったホテルの多くは、この問いを立てる前に着手すべき工程を飛ばしています。
ホテルのリニューアルは、”建物を改装する仕事”ではなく、**”既存の事業を再設計する仕事”**です。順序を間違えると、内装は綺麗になっても、客単価も稼働率も改善しないという結果になりかねません。
この記事では、何から手をつければいいか迷っているオーナー様向けに、構想からリオープンまでの工程を時系列でご紹介します。
リニューアルの全体像
中規模のホテル・旅館(10〜30室)の場合、構想からリオープンまでは12〜18ヶ月が目安です。
| フェーズ | 期間目安 | 主な作業 |
|---|---|---|
| ① 現状診断・課題抽出 | 1〜2ヶ月 | 収益・評価・運営の棚卸し |
| ② コンセプト再設計 | 1〜2ヶ月 | 誰に、何を、いくらで |
| ③ 事業計画の更新 | 1ヶ月 | 投資額と回収の見立て |
| ④ 設計 | 3〜6ヶ月 | 上記を反映した空間・設備設計 |
| ⑤ 施工 | 4〜10ヶ月 | 工事(営業継続の有無で変動) |
| ⑥ 運営移行準備 | 1〜2ヶ月 | スタッフ研修・OTA更新・価格改定 |
| ⑦ ソフトオープン | 1ヶ月 | 試験運営と最終調整 |
①〜③の上流工程を丁寧に行うことが、リニューアル成功の分岐点です。
① 現状診断:何が問題で、何が問題でないかを見極める

最初にやるべきことは、「今のホテルの何を変えるべきか」ではなく、**「何が機能していて、何が機能していないか」**を整理することです。
具体的に確認するのは:
- 直近3年の客室別収益・稼働率の推移
- OTA・口コミの定性データ(クレームと称賛のパターン)
- スタッフが感じている日々の運営上の摩擦点
- 競合ホテルとの単価・客層の比較
ここを飛ばして「とりあえず内装を変えよう」と進むと、評価されている強みまで失うリスクがあります。逆にここを丁寧に行えば、限られた予算を本当に効く場所に集中できます。
② コンセプト再設計:誰に、何を、いくらで

現状診断で見えた課題と強みをもとに、コンセプトを再設計します。
よくある誤解は、「コンセプト=内装のテイスト」と捉えてしまうことです。実際には、ターゲット客層・提供体験・価格帯の3つを一文に落とし込む作業です。
Before(曖昧な状態) 「ビジネス利用中心の旅館として、よりおしゃれな内装に」
After(一文に落とし込んだ状態) 「都心で働く30〜40代の女性が、月に一度ひとりで日常から離れに来る、12室の宿。1泊3.2万円」
この一文が決まれば、後のすべての判断——設計・設備・アメニティ・スタッフの言葉づかいまで——に芯が通ります。
③ 事業計画の更新:投資額を数字で設計する
コンセプトが決まったら、それを数字に翻訳します。
- 想定客単価 × 想定稼働率 × 客室数 = 期待売上
- 期待売上から逆算した適正リニューアル投資額
- 投資回収年数の見立て
- 営業継続リニューアルか全面閉店リニューアルかの選択
「いくらかけるべきか」は、コンセプトと数字が揃って初めて出る答えです。
先に予算を感覚で決めて設計を発注すると、ほぼ必ず予算オーバーか、投資対効果の見込み違いが発生します。
④ 設計:上流の決定を空間に翻訳する
ここまで揃ってようやく、設計に入ります。
設計者に必要なのは、抽象的なテイストの指示ではなく、①〜③で固まった情報です。
- ターゲット客層と想定単価
- 提供したい体験と世界観
- 投資額の上限
- 工期の制約(営業継続の有無)
この情報が揃った状態で設計を依頼すれば、設計者は迷わず、変更も最小限になります。逆にここが曖昧なまま発注すると、設計変更による追加費用と工期延長が発生します。数百万円単位になることも珍しくありません。
⑤ 施工:営業を続けるか、閉店するか
施工フェーズで最大の意思決定は、営業継続するか、閉店するかです。
| 選択 | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| 営業継続 | 売上を維持できる | 工事範囲・騒音に制約。工期が長くなる |
| 部分閉店 | 効率的に進む | 一部売上機会を失う |
| 全面閉店 | 工期短縮・設計自由度高 | 数ヶ月間の売上ゼロ |
③で見積もった売上規模と投資額のバランスで判断します。「工事を早く終わらせたいから全面閉店」は、必ずしも最適解ではありません。
⑥ 運営移行:内装と同じくらい重要な工程
リニューアルで見落とされがちなのが、運営の更新です。
新しいコンセプトに合わせて以下もセットで変える必要があります:
- スタッフの接客フロー・言葉づかい
- 朝食メニュー・アメニティの見直し
- OTA掲載文・写真の刷新
- 価格設定の改定
これらを変えなければ、内装だけが新しい、古いホテルのままです。
⑦ ソフトオープン:1ヶ月の試験運営を挟む
リオープン直後の1ヶ月は、正規価格より少し抑えた試験営業を推奨します。スタッフのオペレーションが安定し、初期クレームの傾向が見えてから本格価格に移行する。この1ヶ月のクッションが、半年後の評価スコアと口コミを決めます。
まとめ:リニューアル成功の4原則
- 「内装から」ではなく「現状診断から」始める
- コンセプトの一文が決まる前に、設計を発注しない
- 投資額は感覚でなく、収支から逆算する
- 空間のリニューアルと、運営のリニューアルを同時に行う

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