ホテルリニューアルの始め方|構想からリオープンまでのロードマップ

ブティックホテルの客室イメージ

公開日:2026-05-04 読了時間:約7分 対象読者:ホテル・旅館のリニューアルを検討しているオーナー様


ホテルや旅館のリニューアルを考え始めたとき、「内装をどう変えるか」「どの設計会社に相談するか」から検討を始めるケースは少なくありません。

もちろんデザインは重要です。

ただ、私たちがホテルのリニューアルについてご相談をいただいた際、最初からデザインの話をするとは限りません。

  • 現在どのくらいの客室単価で販売しているのか
  • どんなお客様に利用されているのか
  • 何が評価され、逆にどこに課題があるのか
  • リニューアル後、このホテルをどんな事業にしていきたいのか

こうしたことを整理したうえで、必要な投資や空間の方向性を考えていきます。

Lbaseでは、ホテルのリニューアルを単に「建物を新しくすること」ではなく、既存のホテル事業を見直す機会だと考えています。

この記事では、ホテルのリニューアルを検討し始めたオーナー様に向けて、構想からリオープンまでの大まかな流れをご紹介します。

リニューアルの全体像

ホテルの規模や改修範囲によって異なりますが、中規模のホテル・旅館であれば、構想からリオープンまで1年以上かけて進めるケースも少なくありません。 ※各工程は並行して進む場合があります。

フェーズ期間目安主な作業
① 現状診断・課題整理1〜2ヶ月収益・評価・運営状況の整理
② コンセプト再設計1〜2ヶ月ターゲット・価格・提供価値の整理
③ 事業計画の更新1ヶ月投資額と収支の検討
④ 設計3〜6ヶ月空間・設備・家具等の設計
⑤ 施工4〜10ヶ月改修工事
⑥ 運営移行準備1〜2ヶ月販売・サービス・運営体制の更新
⑦ リオープン運営開始・調整

特に重要なのは、設計に入る前の①〜③です。

実際のプロジェクトでは、この段階をどこまで整理できているかによって、その後の設計や投資判断のしやすさが大きく変わります。


① 現状診断|変えるところと、残すところを考える

ホテルリニューアルの計画書イメージ

リニューアルだからといって、すべてを変える必要があるわけではありません。

長く運営しているホテルには、設備の老朽化などの課題がある一方で、既存のお客様から評価されている部分もあります。

そのため最初に、次のようなことを確認します。

  • 客室単価や稼働率、売上の推移
  • OTAや口コミで評価されている点、不満が多い点
  • 現在利用しているお客様の属性
  • 周辺ホテルとの価格や商品の違い
  • スタッフが感じている運営上の問題

数字だけでは分からないこともあります。

例えば、お客様から見れば問題のない設備でも、清掃やメンテナンスに時間がかかっていることがあります。反対に、古いけれどそのホテルらしさとして評価されているものもあります。

「古いから変える」のではなく、何を変えて、何を残すのか。

まずはそこを整理することが、リニューアルのスタートだと考えています。


② コンセプト再設計|デザインを決める前に、事業の方向性を決める

コンセプトを書き出すイメージ

「コンセプト」というと、内装のテイストやデザインテーマをイメージされる方も多いと思います。

ただ、ホテルにおけるコンセプトは、それだけではありません。

  • 誰に利用してもらいたいのか
  • いくらで販売するのか
  • その価格で、どんな体験を提供するのか

こうした条件を整理することが先になります。

例えば、現在1万円台で販売している客室を、リニューアル後は2万円台、3万円台で販売したいのであれば、単に内装を新しくするだけでは十分ではないかもしれません。

客室の広さ、家具、照明、アメニティ、朝食、共用部、サービスなどを含めて、「その価格を払う理由」をつくる必要があります。

一方で、既存のお客様を維持することが重要なホテルであれば、急激に商品を変えることが正解とも限りません。

私たちはこの段階で、デザインの話だけではなく、リニューアル後にどんなホテルとして運営していくのかをオーナー様と一緒に整理していきます。


③ 事業計画の更新|「いくらかけられるか」を整理する

方向性が見えてきたら、次に考えるのが投資額です。

リニューアルでは、「せっかくならここも変えたい」と工事範囲が広がり、当初想定していた予算を超えてしまうことがあります。

だからこそ、設計を進める前に次のような項目を整理しておくことが重要です。

  • 想定する客室単価
  • 想定稼働率
  • リニューアル後の売上
  • 必要な工事範囲
  • 投資回収の考え方

もちろん、ホテルの投資判断を単純な計算式だけで決めることはできません。

建物の状態、今後の保有期間、ブランド戦略、資金調達などによっても判断は変わります。

重要なのは、「できるだけ安く改装する」ことではなく、目指すホテルに対して、どこまで投資することが妥当なのかを考えることです。


④ 設計|事業の方向性を空間に落とし込む

ここまで整理して、ようやく具体的な設計に入っていきます。

設計者には、次のような条件を共有します。

  • 誰に利用してもらうホテルなのか
  • どのくらいの価格帯を想定しているのか
  • どんな体験を提供したいのか
  • 投資額はいくらなのか
  • 営業を続けながら工事をするのか

ホテルの設計では、見た目だけではなく運営のしやすさも重要です。

私たち自身、ホテル運営に携わってきた中で、完成した空間を実際に運営してみると、設計段階では見えにくかった問題が出てくる場面を経験してきました。

例えば、清掃のしやすさ、スタッフの動線、備品の収納、リネンの管理、家具の耐久性などです。

一つひとつは小さなことですが、毎日運営するホテルでは、その積み重ねがスタッフの負担や運営コストにつながります。

そのためLbaseでは、デザインだけではなく、「完成後にどう使われるか」まで考えながら空間を検討しています。


⑤ 施工|営業を続けるか、休館するか

既存ホテルのリニューアルでは、営業を続けながら工事をするのか、一部を休館するのか、全面的に休館するのかも大きな判断になります。

方法メリット注意点
営業継続宿泊売上を維持しやすい騒音・搬入・工事時間などの制約が増える
部分休館営業と工事を並行しやすい工事計画やお客様の動線に配慮が必要
全面休館工事を進めやすく、改修範囲の自由度も高い休館期間中の宿泊売上がなくなる

どの方法が正解ということではなく、工事内容、稼働状況、繁忙期、資金計画などを見ながら判断します。

そのため、工事の進め方についても設計が終わってから考えるのではなく、計画の早い段階から検討しておくことが大切です。


⑥ 運営移行|空間と一緒に運営も見直す

リニューアルというと、どうしても工事の完成がゴールになりがちです。

しかし、実際にはそこからホテルの運営が始まります。

例えば、客室単価やターゲットを変えるのであれば、次のような部分についても見直しが必要になります。

  • OTAの掲載写真や紹介文
  • 価格設定や販売プラン
  • アメニティや朝食などの商品構成
  • スタッフの接客やオペレーション

空間だけが新しくなり、販売方法やサービスが以前のままでは、せっかくのリニューアルの効果を十分に活かせない可能性があります。

設計・施工と並行して、リニューアル後の「売り方」と「運営方法」も準備していきます。


⑦ リオープン|実際に運営しながら調整する

どれだけ事前に準備していても、実際にお客様を迎えて初めて分かることがあります。

  • スタッフの動線に問題はないか
  • 清掃に想定以上の時間がかかっていないか
  • 新しい設備の使い方がお客様に伝わっているか
  • 設定した価格に対して、どのような評価を受けているか

リオープン後はこうした点を確認しながら、必要に応じて運営を調整します。

案件によっては、一定期間を試験運営として設定してから本格的な販売に移行する方法もあります。

「完成したら終わり」ではなく、実際の運営を通してホテルを仕上げていく。

リニューアル後には、そうした期間も必要だと考えています。


Lbaseがホテルリニューアルで大切にしていること

リニューアルのご相談では、「客室をもっとおしゃれにしたい」「古くなった家具を入れ替えたい」といったところからお話が始まることもあります。

もちろん、そこから始めても問題ありません。

ただ、お話を聞いていくと、本当の課題が別のところにあることがあります。

  • 客室単価を上げたい
  • 競合ホテルとの差別化が難しくなっている
  • 今のお客様とは違う層を取り込みたい
  • 運営の負担を減らしたい

そうした課題を整理すると、必要なのは全面改装ではなく、一部の家具や照明を変えることかもしれません。

反対に、空間だけではなく、ホテルの商品や運営そのものを見直す必要があるかもしれません。

私たちは、最初から「設計すること」を目的にはしていません。

ホテル運営、空間デザイン、家具・FF&Eなど、異なる立場からホテルに関わってきた経験をもとに、事業と空間の両面から『何を変えるべきか』を整理することを大切にしています。


ホテル設計の打ち合わせイメージ

ホテルリニューアルをご検討の方へ

ホテルのリニューアルを検討しているものの、

  • まだ具体的な計画になっていない
  • 何から手をつければいいのか分からない
  • 設計会社に相談する前に方向性を整理したい

という段階でも構いません。

Lbaseでは、構想段階からホテルのリニューアルについてご相談いただけます。

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